任意後見制度のメリット・デメリット

任意後見制度には、活用することで得られるさまざまなメリットがあります。同時に、いくつかのデメリットも存在します。 任意後見制度のメリットとデメリットは、どのようなものなのでしょうか。

任意後見制度のメリット

これまでの生活スタイルの尊重

任意後見制度は、本人の意志を本人の判断能力低下後においても実現しようとする制度です。もし判断能力が低下してしまったとき、どのような財産管理や療養・介護施設との契約などを望むのか、またそれを誰にお願いしたいのか、本人が契約によって自由に内容を決めておくことができます。

代理行為を容易にする

事務を委任される側である受任者(任意後見が開始された後は任意後見人)にとっても、この任意後見制度は便利な制度です。もし本人が任意後見契約を結ばずに認知症などで判断能力が低下してしまった場合、家族が本人のために銀行預金の操作や介護施設との契約などを結ぼうとすると、その権限が本当にあるのかどうか、銀行や各施設から多数の書類提出を求められたり、その度ごとに委任状を作成する必要に迫られたりすることがあります。

このような面倒な手続きが続くと、判断能力の低下した本人の日常生活を維持するため、本人の預金から一定額を引き出すことも難しくなってきます。この点、任意後見契約を締結しておけば、任意後見開始時に登記がなされ、これらの証明が容易になります。

受任者に対する誤解や疑いを防止できる

任意後見契約をせず、同居の子に銀行預金や土地の管理などを頼んでいると、思わぬところでその子が疑われることもあります。たとえば、本人が亡くなり同居の子が相続人の一人となった場合、他の同居していなかった子から、親の金を勝手に使っていたのではという疑いをもたれることもあります。

もし任意後見契約をしっかりと結んでおき、本人(親)の判断能力が低下した後は任意後見監督人を選任してもらっていたなら、監督人が後見の内容をチェックしますから、上記のような疑いをもたれる可能性は低く抑えることができるでしょう。つまり、勝手にお金を使っていたのではなく、あくまで親の意志の下に、親のためにいろいろな事務を行なっていたのだという証拠になりやすいということです。

相続放棄を行なうときにも便利

本人の判断能力が低下して以降、本人が誰かから借金を相続しそうになったという場合、任意後見人などの代理人がいないと相続放棄が難しい手続きとなります。なぜなら、相続放棄は被相続人(借金を作った人)が亡くなってから、3カ月以内に家庭裁判所で手続きを行なわなければならないからです。

相続が生じてから、慌てて法定後見制度を利用しようとしても、法定後見に関する家庭裁判所の手続きに日数がかかってしまい、相続放棄がスムーズに行なえない可能性があります。一方任意後見人がいれば(もちろん、相続に関する代理権を与えていることが前提ですが)、任意後見人が代わりに放棄の手続きを行なうことができます。

任意後見監督人による監視の目が期待できる

さらに、任意後見は任意後見監督人が家庭裁判所によって選任されてからスタートします。任意後見人の事務がしっかりと果たされているかどうか、任意後見監督人がチェックする仕組みになっています。

任意後見制度のデメリット

判断能力低下後には利用できない

一番のデメリットは、本人の判断能力が低下してしまった後においては、任意後見制度を利用することができないという点でしょう。このような場合は、任意後見制度ではなく、後見、保佐、補助といった法定後見制度を選択して利用することになります。

判断能力が低下する以前においては、任意後見はスタートしません。この点、高齢者などで判断能力はしっかりしているものの、身体的に日常生活などが難しく、 財産管理など事務を頼みたいというとき、任意後見制度は利用できないことになります。このような場合は、財産管理の委任契約などを任意後見契約とは別に結 んでおくなどの手段をとることになります。

任意後見人には取消権がない

法定後見で本人のサポート役となる成年後見人、保佐人、補助人などには、一定の行為についての「取消権」が与えられています。このため、たとえば本人が必要のない高額な商品をよくわからずに購入してしまった場合などでも、比較的容易にその契約を取り消すことができます。

一方、任意後見人には、このような取消権がありません。必要のない高額な商品をよくわからずに購入してしまったという場合、任意後見契約の内容や他の手続きなどの活用如何にもよりますが、任意後見人が当然にすぐ取り消すことができるという制度ではありません。

本人が悪徳業者などに騙されてしまいやすいとか、必要のない契約を繰り返してしまうというような状況が生じるのであれば、法定後見の利用を検討したほうがよいかもしれません。もちろん、任意後見制度を利用後に、このような問題が生じた場合には、任意後見人が法定後見への切替を判断して事後的に利用することも可能です。

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